野球少年でもわかる!~日本サッカーと世界の違い~

野球少年でもわかる!~日本サッカーと世界の違い~

今回は論文レビューです!

できるだけ幅広い知見から学びたいという事で、サッカーに関する論文を読んでみました⚽

論文は、
鈴木ほか(2019).プロサッカーリーガにおける得点機会獲得のための攻撃プレーの分析パスプレーに着目して 体育学研究 64:761‐775,2019.
という論文です。

サッカーにおける攻撃プレーについて分析した論文となっております。

今回のレビューを読んでいただければ、
Jリーグとブンデスリーグとの違いについて理解をし、
日本サッカーの弱点が理解できると思います。

 

また、体育教師目線でこの結果を、
どのように現場に活かすのかも考察してみました。

 

序論

現代サッカー

まずは当たり前のことですが、
サッカーにおける攻撃の最優先事項は
ゴールすることですよね。

近年では
ディフェンダー(以下:DF)
ミッドフィルダー(以下:MF)
フォワード(以下:FW)
のそれぞれで形成されているラインの距離が縮まり、

コンパクトなサッカーになってきています。

#ゴールが最優先

これは、相手にスペースや時間を与えない
組織的に連動した守備が行えるためです。


2014年Wカップにおいても、このような守備体系で
スピーディーなカウンターを狙うチームが多かった。

しかし!
優勝したドイツを筆頭に上位チームはポゼッション攻撃も使い分けていたという事が明らかになりました(JFA,2015a)。

 

攻撃の特徴


サッカーの攻撃には大きく二種類あり、
上記の図のようにそれぞれの特徴があります。

W杯で上位に進出するチームは
この両方を高いレベルで行っていたんですね。

ボールは前に運べ!

ただどちらの攻撃においても、
ボールを前に運ぶ
というのが非常に重要になってきます。

サッカーの得点を挙げたエリアについてみてみると、
ペナルティエリア(以下:PA)内からのシュートが70%以上
というデータが存在します。(Nijororai,2013;Yinnis et al.,2013)
→いかにしてPA内に侵入してシュートを打てるかが重要

上記の図にあるように、PAに関してはこれまでに多くの論文等で
様々な事が述べられてきました。
守備側にとっても神経を使うエリアなんですね。


DF-MF間エリアの重要性

サッカーの攻撃において
相手DFが形成するDFラインと、相手MFが形成するMFラインとの間に
形成されるスペースを利用した攻撃があります。

このエリアが非常に重要になってきます。

DF-MF間で攻撃をするメリット
・多くの守備者の背後でプレーができる
・シュートを狙える
・相手守備陣の背後へのパスを狙える
→このエリアは重要である

 

現代サッカーでは、ポゼッションサッカーの為
DF-MF間へのプレッシャーは厳しくなるが、
攻略することが非常に重要になります。

 

日本サッカーの課題


JFA(日本サッカー協会)は日本サッカーについて
以下の3点が不足していると述べています。
また2014年w杯での成績は下の図にある通りです。

 


・パスは回るがゴールに向かうプレーが少ない
・相手に激しく寄せられてもボールを奪われない強さ・テクニックがない
・ゴールへ向かう意識・プレー

 

 

上記のように日本はボールを保持するものの、
PA内でのシュート率が低いことがわかります。

2014年W杯優勝国のサッカー
日本のJリーグ(以下:JL)とドイツのトップリーグであるブンデスリーグ(以下:BL)

この二つを比較したところ
BLの方がJLよりも前方へボールを運ぶプレーを、行う割合、成功率が高いことが明らかになりました(鈴木ほか,2018)。


JLでは、DF-MF間でボールを失ってしまうという課題があります。
このことにより得点機会が減少していると考えられます。

さらには、
DF-MF間を利用したプレーのメリットとして
決定的なパスを出せる事ができる(林,2011)
とされています。

このことからも、DF-MF間からパスをもらった選手の
状況がどのようになっているかも重要になります。

本研究の目的

 

#得点を得るために


この研究では、
DF-MF間を利用した攻撃において、
上記の3つに関してJLとBLの比較を行う事で、
JLの課題を検討することができ得点機会獲得の為の一助になることを目的とされました。

 

方法

標本

この研究では、上記の図にあるように
JL20試合:BL20試合についてテレビ放送の録画映像を用いて分析をされた。

 

エリアの区分け

本研究ではサッカーのピッチを下記のように区分けした。

 

DF-MF間の定義


DF-MF間を定義する上で守備組織が形成されているかどうかを考えなければいけません。

この研究では、
守備組織が形成されている=オフサイドラインから6m以内にDFが3人以上いる
と定義し、2種類のDF-MF間を設定しています。

下記の2つの図のグレーの部分がDF-MF間となっています。

守備組織が形成されている場合

 

上記の図のように、
オフサイドラインから6mがDFライン
このDFラインから最も近い場所にいるMFをMFラインとしました。

 

守備組織が形成されていない場合

守備組織が形成されていない場合
=オフサイドラインから敵陣側の6m以内の範囲に2人以下しかいない状況です。

この状況では、オフサイドラインから3人目まではDFとし、4人目をMFとして考えました。
そのため、オフサイドラインから4人目のMFをMFラインと設定しました。

 

測定項目

 

この研究では下記に示す3つの項目に関して調査を行った。

 

相手DFの位置に関する定義

この研究では、攻撃の選手から見た相手DFの位置について上記の図のように定義をしました。

 

プレー方向の定義

この研究では、プレー方向の定義について、上記のように定義づけました。

統計解析方法

客観性の比較

測定項目の検討性を行うために、
サッカーの科学研究者+筆者がほかの試合で分析結果を抽出→各項目におけるk係数(信頼性)を求めました。

各項目の生起率(起こる確率)の比較

・測定項目の①~⑤はJLとBLの対応のないt検定を実施
(2群の数の差に意味があるのかを検討)

・それ以外の項目についてはχ二乗検定を実施
(⑥・⑦は%によるデータになるので2群の割合の差に意味があるのかを検討)

 

 

結果及び考察

JLとBLを比較し、それぞれを特徴づける結果について有意な差があった項目を記載します。
(BL・JLを比較し、不等号で回数・割合の大小を示しています)

分析の信頼性

この研究でのデータの収集に関しては他者で信頼性を分析した結果、信頼性が得られました。

 

攻撃の概略について

攻撃の概略に関しては、
①攻撃回数 ⑤攻撃成功率 ⑥DF-MF間侵入率
の3項目で有意差が見られた。

上記の結果からみて、
日本の方がボールを保持している時間は長いが、攻撃成功率(相手にボールを取られない)はBLの方が上回っている。
これに関しては、他の先行研究でも同様の結果が見られている。
→BLの方がJLよりも少ない攻撃回数であるが成功率が高い。

DF-MF間侵入率については、

 

JLはBLに比べてDF-MF間を利用する割合が低い。
これは、スキル的な要素が大きくかかわっていると考えられ、
日本の方がプレッシャーの少ないエリアを利用していると考えられる。
→結果的にDF-MF間へ侵入することができない。

DF-MF間に関する項目について

DF-MFのへの侵入方法について

侵入方法について、
パス出し手「タッチ数」に関しては、「3タッチ以上」という項目で有意差が見られました。
→BLはJLと比較してドリブル→パスが多いという事がわかります。

ドリブルを使用することでパスを出すタイミングをずらすことができ、
相手DFによるパスカットを避ける事ができる為、攻撃の展開がしやすいという事も考えられます。

 

DF-MF間のプレーに関する生起率について

パスを受けた際の前方相手DFの数について


上記の図にあるように、
BLよりもJLにおいてDF-MF間でパスを受けた選手の前方にDFがいる割合が高い
これがJLがボールを前方に運べない理由であり、得点機会が少ない要因であると考えられる。

このことは、
相手DFから離れた状態でボールを受ける事が重要であるという事を意味しており、
→オフ・ザ・ボールの動きの質がJLよりもBLの方が高いことが考えられる。

 

DF-MF間侵入後のプレー方向について

上記の図にあるように、

JLの方がDF-MF間に侵入した選手が、前方にプレーできていない事が明らかとなりました。
→日本がBLと比較して、得点機会が少なかった要因として考えられる。

さらには‥
後方へのプレーの成功率においても、
JLの方がBLよりも後方へのプレーが多いにも関わらず、成功率はBLの方が高い。
→前方に進めなかった場合の後方へのプレーでJLの方がボールを奪われている。

これに関しては、相手に激しく寄せられてもボールを奪われないテクニック・強さの欠如である(JFA,2015a)
という考察もされています。

 

 

パス受けエリア+パスを受けた選手の状況について

この項目では、
①パス受けエリアと②パス受け状況のそれぞれで有意差が見られました。


上記の図にあるように、
・ゴールに近いエリアでパスを受けている割合はBLの方が高い
・相手の背後でパスを受けている割合もBLの方が高い
→BLの方がDF-MF間において有効性の高い攻撃を行えているか考えられる。

この結果に関して、
・試合結果よりも得点機会の数が攻撃の有効性を評価する上で信頼性が高い(Olsen and Larsen,2017)
という研究結果から、BLの方がDF-MF間で有効な攻撃を行っていると考えられます。

 

 

結論

 

JLとBLの比較をまとめました。

#攻撃の概略
得点機会 JL>BL
攻撃成功率 JL>BL
ボール保持率はJLの方が高いが攻撃成功率はBLの方が高い
→JLの方が攻撃効率が悪い

#DF-MF間
・前方への攻撃 JL>B
・後方へのプレー成功率 BL>JL
・DF-MF間への侵入率 BL>JL
・前方に相手DFがいる割合 JL>BL
BLの方がDF-MF間に侵入し、攻撃を展開している
→得点機会が多い要因であり、オフ・ザ・ボールの動きの質も高い

 

 

JLに必要なもの

これまで、BLとJLで比較をしてきました。
その中で、これからのJLに必要なもの、

①前方へのプレー生起率
②プレー成功率の向上
③DF-MF間侵入率を上げる
④DF-MF間での得点機会の生起率向上

この4つを実現させるために、
テクニックや強さの向上
オフ・ザ・ボールの質の向上
が必要になります。

当たり前の事やん!
と思うんですが、この論文の結果から、
これらのスキルが向上することによって日本のサッカーが
どのように良くなるのかがイメージすることができます。

この論文を授業で活かす為に

今回レビューした論文を授業で活かす際に、
どのような活用が考えられるでしょうか?

サッカーの授業で使用することを考えてみました。

こんな感じでしょうか?
ゲーム分析の際の資料として活用できそうです。
他の国についても分析してみても面白いかもしれません。

その他にも
・自チームを分析する際の項目が明確になる
・強いチームはどのようなサッカーを展開しているのかを理解させる
・勝つために必要なスキルの重要性の理解度を高める
等につながると考えます。

科学的根拠に基づいたデータを授業で使用することは、
生徒への納得度や理解度を高めると思います。

今回はだらだらと書いてしまいましたが、
もっとコンパクトにレビューできるように研鑽していきたいと思います。

目指せインテリ体育教師!!!!!